日本とヨーロッパのクラブ経営の違い

先日、ヨーロッパのクラブでGMをしていた方と話をする機会がありました。

日本でいうGM(ジェネラルマネジャ)は、主にチームの現場サイドの仕事によっていて経営や広告宣伝、営業には携わらないことが多いようですが、ヨーロッパのクラブでいうGMは、中小企業の社長のような役割だと教えていただきました。

日本のプロスポーツの特殊な形態かもしれませんが、野球のチームもサッカーのチームも、クラブの経営に親会社の資金と経営が深く関与しています。親会社が何か事業をして利益を出しているので、クラブの収支があっていなくても、親会社から資金が投入されて経営がなりたっている状態です。

言い換えると、金遣いのあらいドラ息子が年末に払わなければならない借金があるが、「お金が足りないので両親に返済を立て替えてほしい」と毎年頼んで借金を返済しているような状況です。両親の仕事がうまく行っていて、息子の借金を立て替えられる状況であればいいのですが、両親の仕事がうまく行かない状況であれば、ドラ息子の借金は返済できず、最悪の場合は破産につながります。

親会社からすれば、事業で毎年利益がでていれば、税金を支払うよりは「クラブ経営に提供する資金=広告宣伝費」と位置付け、親会社事業のコストと考えているのです。ただ、このシナリオはあくまで親会社の事業で毎年利益がでている前提です。赤字決算をした親会社が、クラブ経営に継続して資金提供をつづけることはなかなか大変です。今年のパナソニックとガンバ大阪の昨今の報道がそれにあたります。

一方、ヨーロッパのクラブ経営は、オーナーがGMを兼務している、または収支に日々目を光らせていることがほとんどです。自分の息子がドラ息子にならないよう、日々、子供の小遣い帳に目を通し、お金の使い方を息子に問いただしています。仮に両親の仕事がうまく行かなかった場合も、この賢明な息子は自分で収支を管理する癖がついているので、独立して自分の仕事、生活を継続することができます。

さて、ドラ息子と賢明な息子の金遣いを比較すると、言わずもかなドラ息子の金遣いが派手なことがわかります。つまり、日本のクラブは、収入以上に支出している場合がほとんどなのです。

私が聞いて驚いたのは、例えば、英国の有名クラブ:アーセナルの育成コーチでも、フルタイムで給与をクラブからもらっているコーチは皆無です。コーチたちは、サッカー以外の本業をもって収入を得ながら、ほとんどボランティアのような立場で育成をしています。日本では、Jリーグは勿論、J2においても、フルタイムで給与をもらっているコーチがほとんどです。親会社の企業文化として、フルタイム雇用は当たり前かと思いますが、アーセナルのような有名クラブでも、コーチ達が職業コーチとして給与をもらえていない厳しい環境があり、育成されている子供たちはその現実を目の当たりにしています。自分を指導してくれているコーチ(元育成チーム出身か元プロ選手)が、他に収入を得るすべをもたなければ、育成コーチだけでは生活できない実態を日々、体感しているのです。

チームのコスト意識が、チームに関わる全ての人に浸透して、それが育成されている子供にも伝わる。まるで、経済的に裕福でない家庭の子供が、両親が節約をしながら一生懸命働いている背中をみながら、子供自身も経済観念を身に着けて、努力を惜しまず成長しようとすることとそっくりですね。

100年以上続くヨーロッパのクラブ経営の一端を伺うことができる面白いお話のご紹介でした。100年の間には、いい時期も悪い時期もありますから、その長い期間存続し続けることができる素養は、こういったこと所で培われているのですね。